生活習慣病

生活習慣病とは、食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒等の生活習慣が、その発症や進行に関与する疾患のことをいいます。
生活習慣と関連する病気としては、高血圧症脂質異常症心筋梗塞狭心症高尿酸血症糖尿症アルコール性肝疾患がん歯周病などがあり、多くは自覚症状のないまま進行していきます。以前は「成人病」という名称で呼ばれており、原因は加齢とともに発症・進行するものとされていました。

人生100年時代を生き生きと過ごすために、ご自身の身体の状態を十分に理解し、加齢によりおこりうる疾病の予防や治療を、今から考えて行きましょう。その伴走者として当クリニックをご利用いただければ幸いです。

収縮期血圧(最大血圧・上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧・下の血圧)が90mmHg以上であると高血圧症と診断されます。

血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことで、高血圧症は正常範囲よりも高い血圧が続く病態のことを言います。血管の内壁は本来弾力性がありますが、血圧が高い状態が続くと血管壁に圧力がかかり、次第に厚く硬くなります。これが高血圧による動脈硬化です。動脈硬化により、血管が硬くなり内腔が狭くなると、通りにくくなった血流を補うために心臓がより強い力で全身に血液を送り、血圧をあげるようになります。

この状態が続くことは非常に危険ですが、高血圧症は自覚症状に乏しく、なかなか自分で気づくことができません。動脈硬化を生じている血管がつまれば、心筋梗塞や脳梗塞の原因になりますし、高い血圧に血管が耐え切れずに破れてしまえば、くも膜下出血などの発症原因となります。また、網膜の毛細血管に損傷が現れ、視覚障害をきたすケースもあります。いずれにしても、高血圧を放置しておくことは大変危険な行為と言えるでしょう。
たかが血圧と考えず、少しでも身体のサインに気づいたら、早めに治療を開始することが必要です。

働き盛りの突然死のうち、7割が心筋梗塞と言われています。
心臓のまわりには、心臓を養う冠動脈という血管が王冠のようにめぐっていますが、その冠動脈が血栓により突然つまり、心臓の筋肉に酸素や栄養が届かなくなることで、心臓の筋肉が壊死(えし)してしまうのが心筋梗塞です。突然、激しい胸の痛みが起こり、冷や汗や顔面蒼白を伴うこともあります。胸が締め付けられるような圧迫感や焼けつくような感じと表現する人もいます。類似した疾患の狭心症と合わせて、虚血性心臓疾患と呼ばれますが、心筋梗塞は冠動脈がふさがり、血流がなくなってしまった状態であるのに対し、狭心症は冠動脈の内径が狭くなった状態で、いくらかの血流は残り、心筋が壊死には至っていないため、心筋梗塞の方がより危険で重篤な病態であるといえます。
心筋梗塞の原因の大部分は動脈硬化と言われています。肥満症や高血圧症・脂質異常症・糖尿病など、動脈硬化を引き起こす生活習慣病が原因疾患としてあげられ、過度のストレスや喫煙・内臓脂肪の増加も危険因子として考えられています。

血液中の脂質の値が基準値から外れている状態を脂質異常症といいます。脂質異常症が問題なのは、動脈硬化の大きな要因となるためです。

中性脂肪(トリグリセライド)が多い
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が多い
善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少ない

中性脂肪や悪玉コレステロールが過剰になると、それが変性して血管壁に沈着し、プラーク(こぶ)となり動脈硬化が進行します。一方、善玉コレステロールは血管壁に蓄積した過剰なコレステロールを回収し、肝臓に戻す作用があり、動脈硬化を抑制する方向に作用します。つまり、動脈硬化の予防や改善には悪玉コレステロールと中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やすことが重要となります。 脂質異常症の原因には、遺伝的な要因によっておこる「家族性高コレステロール血症」もありますが、大多数の原因は、ゆがんだ食生活(肥満・カロリー摂取過多)や過度な飲酒・喫煙・運動不足・ストレスなどの生活習慣によるところが大きいとされています。ご自身の身体の状態をしっかりと把握し、まずは食事療法と運動療法で食生活の改善を行うことが完治への近道となります。

血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症といわれます。尿酸はプリン体が分解されてできる老廃物で、通常は尿と一緒に体外に排出されますが、うまく排出されずに体内に貯留すると、血液中の尿酸値が上昇し、高尿酸血症と診断されます。プリン体を多く含む食品(ビールなどのアルコール、レバー、干物など)の多量摂取や、脱水、肥満などが高尿酸血症の原因といわれています。

血中の尿酸が過剰になると、血管の中で結晶化し、それが関節に炎症を起こし痛風発作を起こします。発症すると手や足の関節に強い痛みを感じ、日常生活が著しく制限されます。また、慢性腎臓病・腎不全の引き金となることもありますし、脱水などから尿管結石を生じ、結石発作といわれる腰痛・血尿をきたすこともあります。

高尿酸血症は、メタボリックシンドローム・糖尿症・高血圧症といった生活習慣病を併発しやすいといわれており、生活習慣の改善が必要とされます。

過食や高脂肪食などを継続的に摂取することにより内臓脂肪がたまってくると、そこから大量の脂肪が肝臓へと運ばれます。余った脂肪が肝細胞の中にたまることを脂肪肝といいます。
お酒の飲み過ぎが肝臓に悪いことは一般的に知られていますが、現在日本人の脂肪肝の原因で多いのは、飲み過ぎではなく、食べ過ぎによるものです。これを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼びます。NAFLDには、症状が軽く改善しやすい単純性脂肪肝(NAFL)と重症タイプの非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の2種類があります。NASHは放置すると肝硬変、肝細胞がんへと進行することが知られています。また、NAFLもNASHに進行することがあります。
生活習慣が原因の脂肪肝は、生活習慣を改善すれば治ります。まずは血液検査を受けてみましょう。肝機能を示すALT(GPT)の基準値は30(IU/L)以下ですが、20(IU/L)以上であれば脂肪肝予備軍と考えられます。